帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められる10つの取引+αとは
現行の制度では、課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が3万円未満である場合に帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められる特例が置かれています(消法※130条7項、消令※249条1項)。
適格請求書等保存方式の下では、この3万円特例は廃止され、「支払対価の額の合計額が少額である場合」に代えて「請求書等の交付を受けることが困難である場合」とされました。「請求書等の交付を受けることが困難である場合」には、当該課税仕入れを行った事業者において適格請求書等の保存を要せず、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により仕入税額控除を認めるものとされます(新消法30条7項)。
具体的には次の10つの取引(限定列挙)
特例の名称は分かりやすい名称をつけ、10個に分けてみました。
①公共交通機関特例
3万円未満の公共交通機関である船舶、バスまたは鉄道による旅客の運送として行われるもの
②入場券等回収特例
適格簡易請求書の要件を満たす入場券等が使用の際に回収されるもの
③自動販売機特例
3万円未満の自動販売機または自動サービス機からのもの
④出張旅費等特例
従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等
⑤ポスト投函特例
郵便切手類のみを対価とする郵便の役務および貨物の運送(郵便ポストに差し出された郵便物および貨物に係るものに限る)
⑥古物商特例
古物営業を営む者が適格請求書発行事業者でない者から買い受けるもの
⑦質屋特例
質屋を営む者が適格請求書発行事業者でない者から買い受けるもの
⑧宅建業者の特例
宅地建物取引業を営む者が適格請求書発行事業者でない者から買い受けるもの
⑨再生資源の特例
適格請求書発行事業者でない者から再生資源または再生部品を買い受けるもの
⑩農協特例
生産者が農協等に委託して行う農林水産物の委託販売によるもの
+α(少額特例)
課税仕入れにかかる金額が税込1万円未満のもの。なお、少額特例の対象となるのは、基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者です。適用期間は、2029年9月30日までの期間です。