職場つみたてNISA奨励金の取扱いを公表
国税庁は、金融庁からの照会に対して、「従業員に対して職場つみたてNISAの奨励金を給付した場合の賃上げ促進税制の取扱いについて」の文書回答を公表しております。
それによりますと、照会に係る事実関係が前提であれば、従業員に給付した職場つみたてNISAの奨励金は、賃上げ促進税制の対象となる給与等に該当すると回答しております。
職場つみたてNISA(少額投資非課税制度)とは、事業主等が、職場という身近な場を通じて、NISAを利用した資産形成ができるように利用者を支援し、福利厚生の増進を図ることを目的とする制度で、事業主が職場つみたてNISAを利用する従業員に対して、福利厚生の一環として奨励金(職場つみたてNISAによる対象金融商品への投資に際し事業主が給付する金銭)を給付する場合があります。
事業主等は、奨励金を給付した場合、会計上、福利厚生費など給与等以外の科目で費用計上している場合もあり、給与等以外の費用として経理されている場合でも事業主等が従業員に給付する奨励金は、「賃上げ促進税制」の対象となる「給与等」に該当するのか疑問が生じるところです。
賃上げ促進税制って何?
賃上げ促進税制とは、従業員の賃上げや人材育成への投資に積極的な企業が、所定の税額控除を受けられる制度です。所得拡大促進税制から改正され、要件の簡素化や控除率の引き上げで内容が拡充しました。
大企業向け・中小企業向けで内容が分かれており、中小企業向けの制度では給与などの増加額の一部を法人税・所得税から税額控除できます。
2022年4月1日からスタートしており、適用期間は2022年4月1日~2024年3月31日までに開始する、各事業年度です(個人事業主の場合は2023年・2024年が対象)。毎年のように改正があり、我々としては…
給与などの支給額が前年度より増加すれば、増加額の最大30%を税額控除できます。教育訓練費の増加で上乗せできる要件もあり、控除できる税額は最大40%です。
賃上げ促進制度を活用すれば、負担を抑えながら給与アップや教育訓練の拡充が可能です。従業員のモチベーション・能力アップにつながり、人材定着や生産性・企業イメージの向上も期待できるでしょう。
中小企業向け賃上げ促進税制の対象者は?
中小企業向け賃上げ促進税制の対象者は、以下の通りです。
・資本金または出資金、従業員数が一定以下の法人
・常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主
・中小企業等協同組合や出資組合の商工組合などの組合組織
中小企業向け賃上げ促進税制の適用要件は?
適用要件には、通常要件と2つの上乗せ要件が存在します。
・通常要件:給与などの支給額が前年度比で1.5%以上増加
・上乗せ要件1:給与などの支給額が前年度比で2.5%以上増加
・上乗せ要件2:教育訓練費が前年度比で10%以上増加
2つの上乗せ要件は併用でき、併用すれば最大40%の税額控除率です。
賃上げ促進税制を適用する際の注意点は?
賃上げ促進税制を適用する際の主な注意点は、以下の通りです。
・一時的な海外勤務をしていても国内雇用者に含まれる
・教育訓練費の増加には対象者・範囲が決まっている
・適用年度と前事業年度の月数が異なる場合は調整する
中小企業向けの制度内容は、要件を満たせば最大40%の税額控除が受けられます。
制度を活用すれば、人件費の負担を抑えながら従業員の賃上げや教育機会拡大も可能です。
従業員の賃上げや教育機会拡大は人材定着や企業の生産性向上にも繋がります。賃上げ促進税制を活用し、自社の成長機会に活かしましょう。