国税の猶予制度とは
こんばんは、税理士の的場です。
年明けより心を痛める出来事が続きいております。被災された皆さまに心からお見舞い申し上げると共に、微力ながらわたしに出来ることを精一杯努めて参りたいと存じます。
国税の猶予制度とは、金銭で一時に納税をすることにより、事業の継続や生活が困難となる場合や、災害で財産を損失した場合など、納税が難しい場合や特定の事情があるときは、所轄税務署に申請することで、最大1年間、納税が猶予される制度をいいます。
なお、猶予制度には、「納税の猶予制度」と「換価の猶予制度」があります。
「納税の猶予制度」とは、災害、病気、事業の休廃業等を原因とした場合に認められる猶予制度です。
一方で、「換価の猶予制度」とは、特に原因は限定されておらず、事業の継続や生活の維持が難しい場合に広く認められる制度となります。
換価の猶予が受けられる場合は?
換価の猶予が受けられるのは、次の①~⑤の要件にすべて該当する場合です。
①国税を一時に納付することにより、事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあると認められること
②納税について誠実な意思を有すると認められること
③換価の猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納が無いこと
④納付すべき国税の納付期限から6か月以内に「換価の猶予申請書」が所轄の税務署に提出されていること
⑤原則として、猶予を受けようとする金額に相当する担保の提供があること
換価の猶予が認められるとどうなる?
換価の猶予が認められると次のような効果があります。
①既に差押えを受けている財産の換価(売却)が猶予される
②差押えにより事業の継続または生活の維持を困難にするおそれがある財産については、差押えが猶予または差押えが解除される場合がある
③換価の猶予が認められた期間中の延滞税が軽減される
猶予期間はどのくらい?
・換価の猶予を受けることができる期間は1年の範囲内です。
(ただし、申請者の財産や収支の状況に応じて最も早く国税を完納することができると認められる期間に限られます。)
・換価の猶予を受けた国税は、猶予期間中、毎月分割して納付します。
・換価の猶予を受けた後、猶予期間内に完納することができないやむを得ない理由があると認められる場合は、当初の猶予期間が終了する前に所轄の税務署に申請することで、当初の猶予期間とあわせて最長2年以内の範囲で猶予期間の延長が認められることもあります。
また、個別の事情に該当する場合は、それぞれの金額について、納税の猶予が認められることもあります。
例えば、新型コロナウイルス感染症の患者が発生した施設で消毒作業が行われたことにより、備品や棚卸資産を廃棄した場合、それらの再調達価額等に相当する金額や、納税者本人又は生計を同じにする家族が病気にかかった場合、医療費や治療等に付随する費用に相当する金額などの納税の猶予が認められます。