合名会社のような税理士法人
税理士事務所と税理士法人の違いは組織形態にあります。
税理士事務所は、税理士が個人事業主として運営する事務所です。
税理士法人は2001年の税理士法改正によって認められるようになった形態で、2名以上の税理士が所属する法人です。
顧客側からの視点では、どれも大きな違いはありません。

※合同会社のような税理士法人 by Sony α4+35mmF1.4
合資、合名、合同
現在設立できる会社の種類は、株式会社・合同会社・合資会社・合名会社の4種類です。
2006年の会社法改正の以前は有限会社も設立可能でしたが、現在では設立できません。
これは、2006年5月1日に会社法が施行され、有限会社法が廃止されましたことによります。
以降は法律の変更により新たに有限会社を設立することができなくなりました。
今までに設立された有限会社は、商号に「有限会社」を含みながら、会社法改正後も「株式会社」として存続することができるようになりました。このような有限会社を「特例有限会社」と呼びます。
これを良しと考える方もおりますし、組織変更をされる方もおります。
つまり古くからある会社ということを無言で主張できますからね。
前職の税理士事務所は有限会社で会計法人を設立しておりましたが、組織変更しました。
もちろん初生ですので、私がやります。
合資会社、合名会社、合同会社は、どれも出資者が責任を負う形態ですが、その責任の範囲が異なります。
合資会社は、有限責任社員と無限責任社員が混在しています。
無限責任社員は債務について無限責任を負い、有限責任社員は出資額の範囲内で責任を負います。
合名会社は、社員全員が無限責任社員のみです。
会社の債務について、社員は出資額に関わらず無限に責任を負います。
合同会社は、社員全員が有限責任社員のみです。
会社の債務について、社員は出資額の範囲内で責任を負いますので、株式会社と同じです。
税理士法人は合名会社
税理士法人は、会社法における合名会社の仕組みを準用した制度になっています。
税理士事務所は個人事業主の組織であり、税理士法人は法人組織でしたね。
税理士法人は最低2名以上の税理士が登録していなければ、名乗れません。
的場税理士事務所は税理士が私1人しかいないので、税理士法人は名乗れません。
そして税理士法人には合名会社の規定が準用されると、税理士法第48条に記載があります。
合名会社には社員がおります。
社員は一般的な意味でいうところの社員とは異なります。
株主兼取締役のような存在であり、全員が税理士でなければなりません。
言わずもがな一般の従業員を雇用して事務に従事してもらうことは可能です。
原則として各社員税理士は全員がその税理士法人を代表することになります。
定款で代表社員を定めることもできます。
税理士法人の社員税理士は、個人名義で税理士業務を行うことや、他の税理士法人の社員となることを禁止されています。
無限連帯責任という重責
税理士法人の大きな特徴として「税理士法人の無限連帯責任」というのがあります。
例えば、お客様から損害賠償請求があり保険でカバーしきれない金額が発生した場合です。
株式会社なら債務超過とか支払不能の場合、破産手続き開始の申立てを行うことができます。
破産手続きにより株式会社が消滅して終了です。
合資会社、合名会社については、破産手続き開始の要因から債務超過が除外されています。
税理士業務から発生した損害賠償請求については、まず税理士法人の財産を充てます。
それでも不足する場合、社員税理士全員が個人財産から負担しなければならないという仕組みです。
これこそがまさに「税理士法人の無限連帯責任」と言えるものです。
出資した金額が責任の上限となる通常の株式会社の株主とはこの点が大きく異なります。
究極的には税理士法人だけでなく、社員税理士全員も破産手続きを検討することになります。
個人が破産すると税理士登録を維持することができませんので、事実上の廃業です。
税理士法人創設時には、社員税理士の責任を一部有限連帯責任論というのがあったようです。
しかし税理士法人は、合名会社を基礎とした税理士の集合体であり、納税者保護の強化や税理士の公共的使命から考えて、無限連帯責任を導入しました。
見ず知らずの税理士が一緒に組むことでその者が犯した損害が自分にも及ぶかもという内部牽制もあると思います。