人的控除の改正で準確後に相続税修正申告の可能性も
準確(じゅんかく)とは、準確定申告(じゅんかくていしんこく)のことです。
変な略し方は他にもあって、確定申告のことを確申(かくしん)と言ったりします。
準確定申告とは、納税義務者が亡くなった際、その相続人が被相続人(亡くなった人)に代わって行う所得税の確定申告のことをさします。

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相続後のお金の出入り、相続財産になるか
相続税の申告を進める中で、「亡くなった後に入ってきたお金や、支払ったお金はどう扱えばいいのか」と悩まれる方はとても多いです。例えば、死亡後に支給される年金、高額療養費の還付、葬祭費、保険料の還付金などは、相続財産に含める必要があるのでしょうか。
一方で、所得税や住民税、固定資産税、介護保険料など、亡くなった方に係る支払があった場合、これらは債務控除の対象になるのかも判断が難しいところです。
実は、これらの入出金は相続税法だけを見て判断できるものではありません。相続税法上は非課税と明記されていなくても、各法律で「公租公課は課さない」と規定されていたり、過去の裁判例によって相続税の課税対象に当たらないと整理されているものもあります。
表面的な「入金」「支払」だけで判断せず、根拠となる法律関係を一つひとつ確認することが、実務ではとても重要になります。
準確定申告の還付金は相続財産か
被相続人について行う準確定申告では、所得税の還付が生じるケースがあります。このうち、「還付加算金」については少し注意が必要です。還付加算金は、確定申告書を提出することによって原始的に取得する性質のものであるため、相続によって引き継ぐ財産ではなく、相続人自身の固有財産と整理されています。そのため、相続税の課税対象にはなりません。
一方、令和7年度税制改正により、所得税の基礎控除の引上げなどが行われ、これらの改正は令和7年12月1日から施行されています。もし同日より前に令和7年分の準確定申告を行っている場合でも、12月1日以後に更正の請求を行うことで、改正後の制度を適用することが可能とされています。
この更正の請求によって生じた「所得税の還付金」については、後述のとおり、相続税との関係で別途検討が必要になります。
還付金が確定しないまま迎える相続税申告期限の対応
被相続人の準確定申告に係る所得税の還付金は、原則として相続財産に含めて相続税の申告を行います(国税庁質疑応答事例にも記載があります)。
ただし、所得税の更正の請求による還付金を受領する前に、相続税の申告期限が到来してしまうことも少なくありません。この場合、相続税の当初申告時点では、相続財産に加算すべき還付金額が確定していないという問題が生じます。
実務上は、まず期限内に相続税の当初申告を行い、その後、還付金の額が確定した時点で相続税の修正申告を行う対応が基本となります。この修正申告により通常は延滞税が問題になりますが、申告期限時点で課税標準等の計算が不能であった場合に該当し、一定期間については延滞税が免除される取扱いとされています。
もっとも、還付金額が事前に確実に把握できる場合には、その金額を見込んで当初申告を行うという実務的な対応も検討の余地があるでしょう。

