在宅勤務をしている従業員に対する出勤命令

在宅勤務は会社がいつでも認める義務があるのか
在宅勤務はコロナ禍を契機に急速に普及しましたが、使用者の監督が及びにくく、生産性の低下を感じる場面も少なくありません。
このような場合、会社は直ちに在宅勤務を解除し、出社を命じることができるのでしょうか。
まず前提として、雇用契約における労務提供義務は「持参債務」とされており(民法484条)、従業員は会社の指定する場所に出向いて労務を提供するのが原則です。
特段の定めがなければ、在宅勤務はあくまで例外的な働き方であり、出社が基本である点を押さえておく必要があります。
在宅勤務が契約上前提となっている場合の注意点
個別の雇用契約書や採用時の説明、勤務実態などから、就業場所が事実上「自宅」と評価される場合には注意が必要です。
東京地裁令和4年11月16日判決は、契約書上は就業場所が本社と記載されていたものの、採用経緯等を踏まえ、原則として在宅勤務であったと認定しました。
そのうえで、在宅勤務を解除して出社を命じるには「業務上の必要性」が必要であると判断しています。
結論として同事件では、その必要性が否定され、出社命令は無効とされました。契約内容と実態の乖離には慎重な対応が求められます。
曖昧な在宅勤務制度こそ規程整備が重要
雇用契約上は出社が前提であるにもかかわらず、コロナ禍を機に曖昧なまま在宅勤務を導入した企業も多く見られます。
この場合、従業員から在宅勤務が既得権であるかのような主張がなされることもありますが、特別な定めがない限り、在宅勤務は従業員の権利ではありません。
ただし、運用変更の際には制度の趣旨や会社裁量であることを丁寧に説明し、理解を得ることが重要です。
あわせて、在宅勤務は許可制であること、業務上の必要性により許可を取り消すことがある点、生産性や評価を判断基準とする点などを規程で明確にしておくことが有用ですね。

