前家賃の収益計上時期は個人と法人で違う

不動産オーナーが家賃を受け取る際、翌月分を当月末に受け取る「前払い」の形式は一般的です。
しかし、この前受けした家賃を「いつの売上に計上するか」という問題は、実は個人と法人で取り扱いが異なります。
今回は、実務で迷いやすいこの収益計上時期の違いについて、それぞれの根拠条文に基づき詳しく解説します。

※前家賃の収益計上時期は個人と法人で違う by iPhone 13 (昔住んでいたマンションから)

個人の場合は「支払日」が原則

個人事業主(所得税)の場合、家賃収入の計上時期は原則として「契約上の支払日」となります。
根拠となる所得税基本通達36-5では、支払日が定められているものはその支払日に計上する旨が明記されています。

つまり、12月末に1月分の家賃を受け取る契約であれば、それは「12月の収入」とするのが原則です。
一方で、例外も認められています(所得税個別通達 直所2-78)。

継続的な記帳を行い、貸付期間に対応させて収益計上している場合には、1月分の家賃を「前受金」として処理し、翌年の収入にすることも可能です。
ただし、事業的規模ではなく、簡易的な集計表のみで管理しているようなケースでは、この例外規定の適用が難しく、原則通り「支払日」での計上が求められる点に注意が必要です。 

法人の場合は「期間対応」が必須

法人の場合、考え方はより厳格になります。
平成30年度の税制改正により、法人税法22条の2において「収益は役務提供(サービス提供)の日に計上する」という原則が明確化されました。

不動産賃貸における役務提供とは、まさに「貸し付けている期間」そのものです。

法人税法には、支払日に計上することを認める「近接する日」という概念もあります。
しかし、法人税基本通達2-1-29では「前受けに係る額を除く」とはっきりと示されています。

つまり、翌月分や翌年分を先に受け取ったとしても、それは「近接する日」のルールからは除外され、必ず貸付期間(役務提供期間)に応じて収益化しなければなりません。
結果として、法人の場合は前受けした家賃を一度「前受金」などの負債に計上し、実際の貸付期間に合わせて取り崩していく「期間対応」の処理が必須となります。

具体例と個人の「見積経費」の特例

具体的な例で比較してみましょう。

令和7年12月末に、令和8年分(1年間)の家賃を一括で受領した場合を想定します。
法人の場合は、全額を令和8年分の収入とします。

対して個人の場合、原則に従えば「令和7年分の収入」となります。
しかし、収入だけが令和7年に集中すると、税負担が急増する恐れがあります。

そこで個人には、所得税基本通達37-3という救済策があります。
翌年分の家賃を当期の収入に算入した場合、その期間に対応する将来の必要経費(管理費や固定資産税など)の見積額を、当期の経費として前倒しで計上できるという規定です。
これにより、収入と経費のミスマッチをある程度和らげることが可能です。

このように、家賃の計上時期は組織形態や記帳水準によって判断が分かれます。
自身の状況に合わせた適切な税務処理を行うためにも、不明な点はぜひ当事務所へご相談ください。