施行から4年経過した配偶者居住権

こんにちは、税理士の的場です。

今日は、相続についてです。
被相続人の配偶者が自宅の所有権を相続しなくても家に住み続けられる「配偶者居住権」の制度が施行されて今年の4月で4年が経過しました。

総務省の統計によると、2023年度の配偶者居住権の登記件数は911件で、近年では900件前後で推移しているらしい。
前年より微増したらしいが、利用者は少ない。相続税の申告件数は例年15万件前後で推移していることから、制度の利用者は一千人に6人程度とごくわずか。

配偶者居住権とは、 旦那さんが亡くなった場合に、奥さん(以下、配偶者という)が自宅の所有権を相続しなくても自宅に住み続けられるという制度のこと。
家の権利を居住権と所有権とに切り離し、配偶者が居住権を得ることで、所有権を所得しなくても自宅に住み続けられるわけ。

配偶者居住権の評価は、原則として配偶者の年齢に応じた平均余命と建物の耐用年数などをベースに算出される。
配偶者の年齢が高いほど居住権の評価は下がり、その分だけ所有権の評価は上がることになる。

登記が必要なのは、仮に所有権を相続した子どもが第三者にこの家を売却したとしても、「私はこの家に住み続ける権利があります」と主張し住み続けることができます。 実はこれがデメリットにもなることも。

配偶者居住権を活用する場合の注意点

例えば以下のようなことが想定できる。
・配偶者がリフォームをしようとしても所有権者の子どもへの同意が必要。
・特老など施設に入るのに資金が必要だが、建物を売る権利はない。
・居住権について売却は認められない。 (住み続けないとしても放置するしかない)
・存命中に居住権の放棄をすれば所有者へのみなし贈与として扱われる。
・配偶者負担の建物の固定資産税の納税通知は所有権者の子どもに届く。

メリットとデメリットを天秤にかけ、慎重に判断しなくてはいけないが、一次相続では、配偶者が不動産を単独取得して1億6000万円まで非課税の配偶者優遇税制を使うほうが節税効果は大きいと考える。

そして二次相続では、通称「家なき子特例」によって別居の長男でも小規模宅地の特例が使えるので、ここでも80%減額という恩恵を受けることができる。

それではまた。