従業員の横領と税務上の取扱い

※従業員の横領と税務上の取扱い by iPhone 15 Pro
刑法上の取扱い
会社のお金の取り扱いはルールを決めて慎重に行う必要があります。
例えば、支払いについては根拠となる書類(支払い先からの請求書、支払いの根拠となる契約書、従業員が立て替えた際の領収書など)を必ず提出してもらい、送金手続きも複数の社員でチェックしてから実行することが鉄則です。
事業活動で取り扱うお金の量は家計の何倍にもなるため、普段見たことのないような額のお金を目の前にして、「少しくらいなら」という気持ちで手を付けてしまう従業員(あるいは役員)が現れることがあります。
この仕事をしておりますと、社長からこのような話はよく聞きます。
会社のお金を個人の懐に入れる行為は、業務上横領罪として刑法253条にて「10年以下の懲役に処する」と規定されています。
横領の手口
横領の手口はさまざまです。
取引先と共謀し、造した請求書を根拠に取引先の口座へ送金させたあとで共謀者と山分けする手口や、経理担当者が自分の口座へ送金し、嘘の仕訳を記録する手口などがあります。
こうした横領事案について、税務調査や法定監査といった第三者の目が入ったときに発覚することもあります。
税務上の取扱い
「2年前に外注費として支払っていたが実は装した請求書に基づく従業員の横領だった」という前提で。
この事実が税務調査で判明した場合を考えてみます。
この場合、2年前の税務申告について修正申告を行うことになります。
まず外注費を否認して横領損失を損金算入します。
外注費から横領損失に変わるだけなので所得は増えず法人税額に影響はありませんが、外注費を消費税の課税取引で処理していた場合は、不課税取引である横領損失に変わるため消費税額が増加します。
次に横領した従業員に対する損害賠償請求権(債権)を借方に計上し、同額を貸方へ収益(金)計上します。
この益金計上により所得および法人税額が増加します。
このとき借方に計上する損害賠償請求権は横領した従業員に対する債権であり、従業員から返済を受けると消滅します。
従業員が無資力で返済できない場合は、所定の手続きを経て法人税基本通達9-6-1とか同通達9-6-2に基づく貸倒損失の計上を検討することになります。

