税理士事務所が今あらためて考えたい「業際問題」

※税理士事務所が今あらためて考えたい「業際問題」 by Sony α4+24-70mmF2.8

逮捕報道が突きつけた業際問題の重み

昨年10月、大阪の税理士法人の代表社員が社会保険労務士法違反の疑いで逮捕されたとの報道は、税理士業界にとって見過ごせない出来事でした。

税理士事務所が顧客サービスの一環として給与計算や社会保険関係の事務に関与してきた例は少なくありませんが、慣習として行われてきたことと、法令上認められていることは必ずしも一致しません。

今回の件は、日常実務の延長線上に法令違反のリスクが潜んでいることを改めて示したものであり、税理士として業務範囲を正確に理解し、慎重に対応する必要性を強く感じさせる事案といえます。

税理士ができること、できないこと

税理士には税務申告や税務相談などの独占業務があります。

社会保険労務士には労働社会保険諸法令に基づく申請書作成や提出などの独占業務があります。

社労士法には、税理士業務に付随して一定の書類作成を行う場合の例外規定もありますが、その範囲は無制限ではありません。

特に年末調整については、税務判断を伴う以上、税理士業務であることが確認されています。

給与計算自体は独占業務ではないため誰が受任するかは別問題ですが、その流れで年末調整まで当然に対応できるわけではありません。

実務上よくある業務ほど、法的な線引きを曖昧にしないことが重要です。

これからの税理士事務所に必要な対応

士業の独占業務は、利用者を守り、専門性に基づいた適正なサービスを提供するために設けられています。

一方で、顧客から見れば「税理士に頼めば周辺業務も含めて全部できる」と考えられがちであり、そこに認識のズレが生まれます。

こうしたズレを放置すると、知らないうちに法令違反へ踏み込む危険もあります。

今後の税理士事務所には、業際に関する知識を所内で共有し、職員教育を徹底することが欠かせません。

そのうえで、他士業資格の取得、有資格者の採用、社労士・司法書士・行政書士などとの連携強化を進め、適法かつ迅速に顧客ニーズへ応えていく体制づくりが求められます。